ウルムチを早朝に出発し、トルファンまで移動する日がやって来た。ウルムチからトルファンまでは、約200㎞。車で3時間ほどの距離だ。向かう間の道路はとても新しく整備されていて、景色は抜群。砂漠続きではあるのだが、日本ではまずお目にかかれない風景の一望を満喫するのが良い。仮眠しようかと思っていたが、結局眠れず、バスの窓の外の風景に釘付けとなる。
まずは放牧されているラクダたちにびっくりする。
そして風力発電機の数の多さにびっくりする。
走っても走ってもゴビ砂漠。
ウイグル自治区は、風力発電と火力発電にて、ほとんどの地区内の電力をまかなっているという。道路に沿って、送電線も多く見かけた。「景観が損なわれる気がするな…。」という観光都市的発想が心に浮かんでくるも、「そっか、ここからの視界以外のところは全部一体太古の砂漠のままなんだった」と、我に返る。
トルファンは「吐魯番盆地(トルファンぼんち)」というだけあって、ウルムチと比較すると気温が一気に暖かくなる。
朝は0℃のウルムチを出発、昼近くには、20℃近くのトルファンに到着するというわけだ。この2、3時間の間に、気温差はなんと20℃というのもまた、非常に面白い体験だ。
↑トルファンの街の入り口。この土地の観光地の入場チケットなどが全て買える所らしい。
市街地では春の花々が咲き始めており、とても可愛らしい。さらに、バイクを乗っている人が多いのだが、ほとんどは電動なのだそう。あの送電線はこういうところでも役に立っているのだ。
トルファンは、あんずや葡萄やスイカなどフルーツの産地。私は野菜もフルーツも大好きなので、ガゼン、このフルーツ天国の地に目が輝く。
まずは、トマト。トマトにはたっぷりの砂糖がかかっていた。「おー、まじすか!? 美味しいの?」と聞くと、「塩かけちゃう日本人にとってどうかはわからないけど、現地ではこういうふうに食べるよ。美味しいと思うよ。」とのことで、食べてみる。
うん。美味しいな。悪くない。ただ、砂糖なくてそのままのトマトでも充分美味しいな(笑)。と感じた。
そして、日本には入って来ていない品種の梨など、珍しい種の果物もあった。
さらにクッキーやケーキなどの甘いお菓子もたくさん。みんな甘いものが好きみたいで、楼蘭ワインにも砂糖たっぷり入れた甘いものが現地の人たちの間では一般的だったのだそう。
↓乾燥ナツメ、アンズ、ナッツも取り放題…!
こちらのレストランではトルファン名物の踊り子さん、楽器演奏者さんが、美しい歌と踊りを披露してくれた。
異国情緒溢れるこの雰囲気、なんと言ったらいいだろう。ヨーロッパでも、東アジアでもない、この土地にしかない美と作法があるのだ。懐かしいような切ないような。
この日はとにかく取材団の全員、現地ガイドさん全員、飲みに飲んで歌って踊る大宴会を繰り広げることになった。
ちなみに、トルファンの一般の葡萄農家さんのご家庭にも訪問させて頂いたのだが、そこではイケメンの若旦那と、舞踊を舞えるこれまた美しい奥様が迎えてくれた。
一件だけ、「ほほう、ここでそうきたか」と思ったのが、「食事する場所には、必ず男性が最初に入ってくださいね」と言われたこと。やはりまだまだこういった習慣は残っているようで、あくまでも“ちょっと滞在しただけの異邦人”である私にとってはこれが最初で最後の体験だったが、きっと住んでみると違うのだろうな…と美しい葡萄の里で暮らす美しい男性・女性についていろいろと想いを巡らせてみる。「まあ、殿方がその分しっかり働いてくれているのであれば、それはそれでいいのかもな」と一人心の中で考えてみたり。これもまた、とても良い経験となった。
で、そんなことを考えているうちに、また果物がどんどん運ばれてくる。
トルファンの葡萄は灼熱の太陽と砂漠ゆえの夜の冷え込み、その温度差のおかげで、とても糖度が高い甘い味に仕上がるとのこと。これは葡萄だけではなく、あんずやスイカなど、夏に獲れるフルーツは全部美味しいらしい。
今回は、3月中の訪問だったので、干し葡萄をたくさん食べた。特に種ごと入っているものは栄養価もとても高いのだそう。もしこの土地で干し葡萄を買うチャンスがあったら、ぜひ種入りを選んでみてほしい。