特集:4年ぶりの香港【前編】、変わった街と、変わらなかった味を食べ歩く旅

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4年ぶりの香港。変わった街と、変わらなかった味を食べ歩く旅

2023年10月、4年ぶりに香港を訪れた。

4年という時間は、短いようで長い。

2019年まで、香港は思い立てば比較的気軽に行ける場所だった。空港に着き、街へ向かい、湿気を含んだ空気が最高。行き交う雑踏に入れば、「また香港に来た」と身体のほうが先に理解した。

しかし、世界を覆ったコロナ禍によって、その距離は突然遠くなった。

いつでも行けると思っていた街へ行けない。次に訪れる日がいつになるのかも分からない。香港は近い外国から、記憶のなかにある街へと変わっていた。

だから2023年10月の香港は、単なる海外旅行ではなかった。

あの街は今、どうなっているのだろう。以前と同じように歩けるのだろうか。そして、香港の味は変わっていないだろうか。

少し緊張しながら降り立った、4年ぶりの香港だった。

最初に食べたくなったのは、焼味だった

4年ぶりの香港で、まず食べたのは、特別に華やかな料理ではない。

飴色の皮が光る焼鵝。鮮やかな黄色い皮をまとった白切鶏。そして、温かいスープに入った米麺。

香港では、ごく普通の食堂で、肉がどんと皿に盛られて出てくる。日本の料理のように余白を残すのではなく、「食べるなら、さあどうぞ」とでもいうような勢いがある。

つやつやとした焼鵝の皮。骨のまわりに残った肉。鶏の淡泊なうま味。米麺のやさしいスープ。

ひと口食べると、記憶のなかにあった香港が急に現実へ戻ってきた。

香港に帰ってきた、と思った。

暮らしていたわけでもないのに、なぜか「来た」より「帰ってきた」という感覚のほうが近かった。そう感じる海外での都市は、私にとっては香港だけだ。

香港では、つい上を見上げてしまう。

空をふさぐように立ち並ぶ高層住宅。壁から突き出す無数のエアコン。開け放たれた窓と、ベランダに干された洗濯物。

観光写真に写る香港は、ビクトリア・ハーバーの夜景や、ガラス張りの高層ビルが中心だ。

しかし、私が香港らしいと感じるのは、むしろ人の暮らしが建物の表面にあふれ出している、こうした風景である。

工事中の建物には、今も竹の足場が複雑に組まれていた。

近代的な高層ビルのすぐそばに、竹を組み上げた足場がある。古いものと新しいもの、合理性と人の手仕事が、当たり前のように隣り合っている。

4年が過ぎ、閉店した店もあれば、新しくできた建物もある。それでも、路地を歩く人の速さや、荷物を運ぶ台車の音、店先から漂う料理の匂いは、私の覚えていた香港と変わらなかった。

香港では、一日中何かを食べている

香港を歩いていると、食事と食事の間にも、食べたいものが次々と現れる。

次はスパイスの香るカレーと肉料理。

香港は広東料理の街であると同時に、世界中の食文化が密集する街でもある。ほんの数本の通りを歩くだけで、インドや中東、東南アジア、ヨーロッパの料理に出会える。

注文した料理が想像以上の量で出てきたり、メニューを完全には理解しないまま頼んでみたりする。それも香港で食べる楽しさのひとつだ。

どの料理も洗練されすぎていない。油も、香りも、量も、きちんと主張してくる。

街のエネルギーが、そのまま皿の上に盛られているようだった。

途中コンビニで薬膳茶を買う。補血茶。

甘い(笑)。補血茶は、、、

【ここだけ2026年8月追記】薬膳師となった今、この時に特に必要な茶ではない(笑)。

黒糖、なつめ、ショウガ・・・ 完全に「温」の飲み物。

清熱を選べよ、と、過去の自分に言い聞かせてやりたい。【ここだけ2026年8月追記】

塩気のあるものを食べた後だったので、ホテルに戻ってイッキ飲み。

直前のカレーの香辛料と、この補血茶のおかげか、体温上昇、身体の巡り、デトックス効果が半端なかったようで、

翌日私の腸は大変なことになっており、約1日、トイレとお友達だった。

しかし、1日で胃腸の具合は完全に回復した。

やっぱり雲吞麺を食べずにはいられない

そして、香港へ来たなら雲吞麺を食べずにはいられない。

訪れたのは、「麥奀雲吞麵世家(Mak’s Noodle)」。

香港の雲吞麺は、日本のラーメンと比べると驚くほど控えめな大きさで出てくる。

細く、弾力のある麺。澄んだスープ。そして、ぷりっとした海老の雲吞。

この小さな一杯は、いつ食べてもすっと身体に入っていく。

4年間、香港へ来られなかった時間が、スープの湯気と一緒にほどけていくようだった。

変わった香港と、変わらなかった香港

4年ぶりの香港は、以前とまったく同じではなかった。

街は少しずつ姿を変え、人の流れも、店の風景も変化していた。

自分自身も、この4年間で暮らす場所や仕事、食に対する考え方が変わった。

それでも、焼味を前にしたときの高揚感や、路地を歩く楽しさ、雲吞麺の湯気にほっとする気持ちは変わらなかった。

旅の記憶は、有名な観光地よりも、食べたもののなかに残る。

2023年10月の香港は、4年分の空白を埋める旅ではなかった。

むしろ、空白があったからこそ、この街が自分にとってどれほど大切だったのかを、もう一度確かめる旅だった。

香港は、見るだけの街ではない。

歩き、匂いを感じ、少し疲れ、そして食べることで、ようやく身体のなかへ戻ってくる街なのだ。

後半へ続く

Sally.Asia 編集室

Sally.Asia 編集室

Sally.Asia Chief Editor Satoko Otsuka 大手映画配給会社の宣伝業務、海外ドラマNAVI編集長などのコンテンツビジネス業界の経験を経て、現在は薬膳料理家として活動中。アナザースカイは香港。 ・国際薬膳師/ヨガ講師/スマート農業指導士 ・食と身体の調律室オンラインスクール主宰 ・百姓ラボ合同会社共同代表 食とエンタ-テイメントを結ぶ企画など、お気軽にお声掛けくだされば幸いです。

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