これは反則級(笑)『暴君のシェフ』を観たら、世界中の人が韓国料理食べたくなるだろ。

映画ごはん、ドラマごはん

韓国ドラマの料理ものは、空腹で観てはいけない

Netflixで『暴君のシェフ』を再生して、早々に思いました。

これは、空腹のまま観てはいけないドラマです。

現代のフランス料理界で活躍するシェフ、ヨン・ジヨンが、ひょんなことから朝鮮王朝時代へタイムスリップ。そこで絶対的な味覚を持つ暴君イ・ホンと出会い、現代の料理技術を武器に生き抜いていく——。

料理、宮廷、タイムスリップ、ロマンス。韓国ドラマ好きが抗える要素がほとんどありません。

さすがに私は、個人的にはもうこのパターンは胸やけしなくもなく(笑)。

しかも第1話から登場するのが、コチュジャンバタービビンバ。と、食の話です。

肉を焼く音。唐辛子の赤。ごはんの湯気。そこへバターのコク。

こんなもの、おいしくないわけがないでしょう。

観ているこちらは王様でも何でもありませんが、画面の前で完全に胃袋をつかまれます。

王を黙らせた、コチュジャンとバターの力

ジヨンがタイムスリップした先には、現代のレストランのような設備も、そろった調味料もありません。限られた食材と道具で、目の前の王を満足させなければ、自分の命すら危うい。

そこで作るのが、肉や山菜、ごはんを合わせたビビンバです。

ビビンバは、さまざまな具材を一つの器で混ぜて完成する料理。野菜、肉、卵、ごはんがそれぞれ別の味と食感を持ちながら、コチュジャンによって一つにまとまります。

そこへジヨンが加える現代的な一手が、バター。

コチュジャンの辛み、塩味、発酵のうまみに、バターの乳脂肪が加わることで、味の角が丸くなり、香りとコクが一気に広がる。辛いだけではなく、甘い、香ばしい、まろやか、そしてまた辛い。

暴君の鋭い舌を一瞬でこちら側へ引き寄せるには、実に説得力のある組み合わせです。

その時代にコチュジャンはあったのか?

ここで、食文化好きとしては少し気になることがあります。

ドラマの舞台は朝鮮王朝時代ですが、現代の私たちが知る唐辛子入りの赤いコチュジャンは、いつから存在したのでしょうか。

唐辛子はアメリカ大陸原産で、朝鮮半島へ伝わったのは一般に16世紀以降とされています。その後、発酵文化と結びつき、現在につながるコチュジャンや、赤いキムチの食文化が育っていきました。

つまり、ドラマの設定年代によっては、現代と同じコチュジャンを使うことには歴史的なズレが生まれます。

でも『暴君のシェフ』は、歴史を忠実に再現するだけの時代劇ではありません。現代のシェフが過去へ入り込み、まだ知られていない味や技術で歴史上の人々を驚かせる。その「あり得なさ」こそが、物語のおいしいところです。

歴史の正解を探しながら観るのも面白い。でも、まずは画面の中の王様と一緒に「何だ、この味は!」と驚くのが正しい楽しみ方かもしれません。

 

 肉と唐辛子は、なぜこんなに食欲を呼び起こすのか

 

唐辛子の辛みは舌を刺激し、汗をかかせ、食欲のスイッチを強引に押します。そこへ焼いた肉の香りが加われば、もう抵抗するのは無理です。

しかもビビンバは、混ぜる前と混ぜた後でまったく表情が変わります。

色とりどりの具材が美しく並んだ姿を一度眺め、スプーンを入れて思い切り混ぜる。赤いコチュジャンがごはんと肉と野菜を包み込み、最後には全体が一つの味になる。

上品に少しずつ食べる料理ではありません。

しっかり混ぜて、大きなひと口で食べる。だからこそ、王様が理性より先に味へ支配される展開にも納得してしまいます。

 

家で作るなら、辛さより「コク」を重視したい

ドラマを観ながら試すなら、ごはんの上に、甘辛く炒めた牛肉、にんじん、小松菜、もやし、きのこ、卵をのせます。コチュジャンは最初から大量に入れず、少量ずつ。

仕上げにバターを5グラムほど加え、熱いごはんの上で溶かすと、全体がぐっとまろやかになります。

辛さが苦手な人は、コチュジャンを減らし、味噌、しょうゆ、すりごま、少量のはちみつで味を補うとよいでしょう。ドラマ飯は、耐久レースではありません。汗だくになって王と戦う必要もありません(笑)。

夜遅くに食べる場合は、肉を少なめにして、もやしやきのこを増やす。卵を加えれば、辛さも穏やかになります。

唐辛子は身体を温め、巡りを促す方向に働く食材ですが、刺激が強いため、胃腸が弱っているときや、のぼせ、口の渇きが強いときは控えめに。自分の身体に合わせて「おいしい」と感じる辛さにするのが一番です。

今日の結論

『暴君のシェフ』のコチュジャンバタービビンバは、単に王様を喜ばせる一皿ではありません。

時代も身分も言葉も超えて、「おいしい」という感覚だけが人を一瞬でつなぐ。そのことを最初に見せる料理です。

それにしても、肉、唐辛子、バター、ごはん。

この組み合わせは、少々反則ではないでしょうか。

観ること、食べること。韓国ドラマの場合、ときどきこの二つは完全に同時進行になります。

今夜『暴君のシェフ』を観るなら、せめて冷蔵庫に卵とコチュジャンがあることを確認してから再生してください。

Sally.Asia 編集室

Sally.Asia 編集室

Sally.Asia Chief Editor Satoko Otsuka 大手映画配給会社の宣伝業務、海外ドラマNAVI編集長などのコンテンツビジネス業界の経験を経て、現在は薬膳料理家として活動中。アナザースカイは香港。 ・国際薬膳師/ヨガ講師/スマート農業指導士 ・食と身体の調律室オンラインスクール主宰 ・百姓ラボ合同会社共同代表 食とエンタ-テイメントを結ぶ企画など、お気軽にお声掛けくだされば幸いです。

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