Sally編集部・台湾出身アヤネです。今回は、日本のアニメやコスプレが大好きな私がずっと前から憧れていたコスプレイヤーのHikariさんにお話を伺ってきました。
コスプレ歴17年、オタク兼腐女子だというHikariさんですが、実は国内外の金融機関でファンドマネジャーとして活躍、ビジネス雑誌「Forbes」に寄稿するなど、その活躍は多方面に及びます。
一方、バックパッカーで40ヶ国以上を旅したこともあるほど海外が好きで、2ヶ月に一度は海外に出向きコスプレイベントにゲスト参加しているそうです。
そのパワフルで魅力的な生き方の原動力はどこにあるのでしょうか。
――コスプレの他に普段お仕事はされていますか?
コスプレで海外のイベントにゲスト出演したり、「Forbes」へ記事の執筆、テレビ出演やネット番組・・だんだんタレントのようになってきちゃいましたね(笑)。今はコスプレイヤーとしての自分の事業をメインに、外資系金融機関で10年のファンドマネージャーのキャリアを活かした仕事をしています。
――ファンドマネージャーもされているとは・・すごいですね。
最近いろんな会社が働き方改革で、多様な雇用形態での専門的な人材を必要としています。だから、朝から晩まで毎日働く正社員とは違った形で働いているんです。海外のイベントに招かれる事も含めて、時間に自由が効く働き方をしたかったので。
――コスプレは何歳の時から始めましたか。
コスプレは、16歳、高校2年生の時です。
――きっかけになった作品や出来事は何ですか。
「幻想水滸伝II」という、コナミが出したゲームがあって、そのキャラクターが好きになりました。自分で衣装を作って、オンリーイベントがあった時にそこに行きました。今は、コスプレの情報は簡単に手に入りますけど、当時はようやくインターネットが普及し始めたくらいの時代。幻想水滸伝のきれいなコスプレイヤーさんが自分のホームページに写真をあげているのを見て、「わーきれい!」と思って。昔は単純に同じアニメや漫画が好きな人と出会って、友達になりたいなっていう純粋な気持ちでコスプレを始めました。
――憧れたコスプレイヤーさんというのは、その方になりますか。
そうですね。中学生の時に手術が必要な病気を患っていたせいで、いじめられた時期があって、学校に居場所がなかったんですね。でも、そのコスプレイベントに初めて行ったとき、その憧れたコスプレイヤーさんたちが私に「かわいいですね!写真撮っていいですか?」って話しかけてくれて・・本当にびっくりしました。その時はまだメイクは下手で、垢抜けない感じだったんですけど、この人たちみたいになりたいとか、併せをしたいと思いながら、一生懸命メイクを勉強して、その後はその人たちと併せの友達になれたんです。
その人たちは、私より年上でもうコスプレ辞めてしまったんですけど。20年前からいたベテランの人たちでした(笑)。
当時のコスプレは隠れた趣味で、その人たちはすごく美人でスタイルはよくても、絶対に表に出たくない人たちだったんです。今でこそ芸能人になりたいとか目立ちたいと思うコスプレイヤーさんもいますけど、芸能人になるためではなく、その人たちも含めて多くの人達は好きだからやっているだけだったんです。
私ももし、そこでこの人たちに出会ってかわいいって言われていなかったら、コスプレはそんなに続けていなかったかもしれない。
――その時はひとりで準備して参加されたんですか?
はい。すごくきれいなコスプレイヤーの女性たちを見て恥ずかしくなって帰りたくなっちゃったりして (笑)。
――コスプレを辞めようと考えたことはありますか。
実は何度も何度も考えました。
大学に入って友だちから「まだコスプレやってるの?」とか、20代になると「ババアじゃん!」なんて心無いことを言われることもありました。絵を描くなら自分じゃないものに投影できますけど、コスプレは自分自身だから。自分の容姿を何か言われるとちょっと傷ついてしまう時もありました。やっぱり一番気にしたのは年齢でした。
――コスプレを反対されたことは?
周りでも結構多かったのが、彼氏に反対されること。「結婚するならもうやめてくれ」って彼氏に言われるパターンですね。それで友達は何人も辞めていて、私が当時付き合っていた彼も理解してくれなかったので、一時、コスプレを辞めていましたね。親に言われても辞めなかったんですけど(笑)。
今はインターネットでエッチな格好をした女の子が男に囲まれて写真を撮られてる画像が広まっていることもありますから、コスプレを深くまで知らない普通の男の人からみると「この子はイベントで性的アピールしてる」と誤解してしまうんでしょうね。
――やめたのはその1回ですか?
この彼氏と付き合った時と、あと受験の時もできなかったです。ファンドマネージャーに就いたばかりの時も仕事が大変すぎてできなかったですね。
――コスプレを続けられる理由は何ですか。
仕事だけしていると、人間関係が損得になっちゃう事も多い。会社の名前でどれだけ自分に利益があるかで人間関係をつくるから、その世界にだけいると心が疲れてしまうんです。それで、一回コスプレを辞めても、やっぱりコスプレの世界の人間関係がすごく温かくて戻ってきました。
コスプレの世界的なイベントで有名になったんですが、金融の仕事でニューヨークに行くことと、付き合っていた彼が全く理解してくれなかったことで7年前に辞めて当時のSNSを全部消したんです。その時は結婚や仕事は現実で、コスプレは現実離れした夢なんだと思っていました。
でも自分がSNSを消した次の日に、私のコスプレのファンになってくれた人たちが「Hikariさんが消えてしまった」「戻ってきてほしい」「Hikariさんが優しく話してくれてうれしかった」とたくさんメッセージを書いてくれていて、感動してしまって・・。
こんな人生でいいのかな、結婚とか仕事とかは現実では大事なものだけど、心の温かさを感じるコスプレの世界は本当に大事なもので、それを無視して消して生きる自分になったら空っぽになってしまうかもしれないって思いました。
みんな何年か経てば忘れるだろう、って思っていたんですけど、7年後に戻ってきたら「7年前にHikariさんに会いました」とか、「7年前にもらった名刺まだ持ってます」とか、覚えてくれている人から結構連絡がありました。会社は辞めてしまえば終わってしまう関係も多いですけど、温かいですよね。
――コスプレをするときに、一番大事なことは何だと思いますか。
「自分らしさ」を出すことです。最近、みんな自分らしさを消して、同じような顔にしてしまうけど、私が目指すコスプレイヤーは、どの格好をしても、どのキャラになっていても、Hikariさんだ!ってわかる人ですね。
――好きな作品ジャンルは何ですか。
最近は「あんさんぶるスターズ」が好きですけど、自分が人生の転機にやって、大きな変化が生まれたジャンルは「ヘタリア」。腐女子なので、ボーイズラブの作品は全部好きですね。
――ちなみに、腐女子になったきっかけは何ですか。
「ファンロード(Fanroad)」、「COMIC BOX Jr.」とか、そういう雑誌が出身の福井で売っていて、小さい時に発見して、「何だろう?」と思って開いたら、ボーイズラブがあって・・新しい世界だけど、すごくいい!(笑)と思いました。
――それはコスプレを始めるより前ですか?
はい。毎月立ち読みするようになったら、ある日コミケ特集が始まって「コスプレすごい!」って思いました。14歳の時、母同伴で福井から東京まで出かけてコミケを見に行ったんです。使い捨てカメラで写真を撮っていたら、母が「あなたがなんでコスプレの写真を撮って喜ぶか分からないんだけど?」ってびっくりしてました(笑)
――1キャラの準備時間は平均どれくらいかかりましたか。
今、大体1日で作っちゃう。数百着くらいを作ってきたのでだんだん早くなっちゃって。
――それは、ウィッグのセットも含めて1日ですか。
男性キャラだとウィッグが大変だから、ウィッグは別で、でも併せて2日以内にはできます。
私は男装がメインですけど、男装って、基本ボトムスはシンプルなズボンなので早くできますね。一回型紙が出来ると、20~30分でズボン一着!みたいな。
――コスプレをしたキャラの中で、一番準備が難しいキャラは何ですか。
格闘ゲーム「ギルティギア」の「カイ=キスク」というキャラが難しかったですね。
――難しいのはどういうところでしたか?
男性キャラなんですが、ケープがすごく広がってて、下の方もケープが広がっていて、マントもついていますね。衣装を表現するのに白い布を10mくらい使いました。あの複雑なデザインの靴も頑張って作って・・こればかりは1週間かかりました。
――ご自分がしたコスプレでお気に入りのキャラベスト3を教えてください。
ハウルの動く城の「ハウル」と、女性キャラの「涼宮ハルヒ」と、ヘタリアの「アメリカ」です。「ハウル」はコミケでやったら好評で、一緒にいた友だちが「ハウルの彼女になってみんなの視線を浴びた気分で誇りに思った」と言っていました、友達の反応も含めて印象深くて楽しかった(笑) 。「涼宮ハルヒ」は10年位前にやりました。女性キャラはあまりやらないんですが、友達に涼宮ハルヒシリーズの「長門有希」が好きで一緒にやろう!といわれたので。ヘタリアのキャラはみんな好きで色々やっているんですが、キャラは「アメリカ」が一番好きです。
後編では、ひかりさんが海外で経験したこと、海外のコスプレ事情をご紹介します。お楽しみに!
Atsuko Sakai -Hikari Green-
(金融女子コスプレイヤーから見た「世界」)
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