2019年に最終章を迎え、見事有終の美を飾ってその幕を降ろした「ゲーム・オブ・スローンズ」。この後にも先にも無いほどのドラマ史に残る傑作が昨年5月で終わった後でも、HBOは「チェルノブイリ」や「ビッグ・リトル・ライズ2」など、多彩な作品を投じ、ドラマファンの期待を裏切ることなく、名作・傑作を提供し続けている――。
2020年、新型コロナウイルスによる世界的なパンデミックで、人々の間にすっかり定着した「おうちでエンタメ」「ステイホーム」などの言葉。エンターテイメント業界の第一線で働く人たちも、きっと新型コロナウイルスの影響をを今もなお受けており、撮影の中止や延期を余儀なくされているに違いない。しかしそんな最中でも、HBOが世に送り出した作品群もまたすごかった…。
今回はそんなHBOの最新海外ドラマラインナップの中から、見て決して損はないハイクオリティなドラマ作品について紹介しよう。
1.アウトサイダー
©2020 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related programs are the property of Home Box Office, Inc.
意外にも、スティーヴン・キング原作作品をHBOが映像化するのはこれが初めてだという。しかし確かに、キングの小説の映像化というのは、過去の作品をとってみても、うまくいったものとそうでないものとの差は激しく、なかなかそう簡単に行かないというのが実情のようだ。
今回HBOが満を持して世に送り出す「アウトサイダー」。
一言でいうと…「ヤバいのが来た。」
見た人にしかわからない、何とも言えない「アウトサイダー」の世界。全10話構成の本作は、前半は、かなりじっくりスローな印象で話が進む。とはいえ、「え?そういう話なの?」という驚きが、静かに、しかし突然やって来る。しかも割と何回も。後半の各話のエンディングは良くできていて、「次回まで待てない!」という感覚に陥れられる。これこそ海外ドラマの醍醐味!ということで、本当にキングの醸し出す世界観に浸ることができる作品と言える。最初は謎は深まる一方だが、後半は少しずつちゃんとみんなが解決へ向けて心も団結していくし、前半がスローだっただけに、後半はかなり気持ち的に焦らされる内容がジワジワと迫ってくる。ベン・メンデルソーン演じる刑事ラルフが背負っていかなければならない十字架や、ある日突然不幸に見舞われる人々の姿が重苦しくも淡々と描かれており、視聴者の心境として「う〜ん…なんだか、やばい所に来ちゃったなあ…」という念に毎回襲われるのだ。
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また、本作で重要なカギを握るキャラクターのホリー・ギブニーはスティーヴン・キング原作の「ミスター・メルセデス」にも登場する主要キャラクターだ。ドラマ化されている「ミスター・メルセデス」でのホリーは、ジャスティン・ルーペ演じる白人金髪の女性として描かれているが、今回のホリーはシンシア・エリヴォが演じており、「ミスター・メルセデス」のドラマを観たことがある人にとっては、ホリーという人物についてなかなか面白い楽しみ方ができるはずだ。
2.ウェストワールド シーズン3
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シーズン1からのドロレスちゃんの変貌が凄まじい。もうすっかり別の人。ここに来て、実は人工知能を操るハイテク技術を持つ会社はデロス社だけでは無かったという、人間界側の新たな勢力も出てきたり、なかなか奥深く作られたストーリーは、そう簡単に視聴者を引き離すことなく続いて行く。これまでは、デロス社のアンドロイドロボット達だけの記憶のリセットや置き換えがフォーカスされていたけれども、本シーズンでは、なんと人間も記憶や行動が操作されていたという恐るべき真実も明らかに。これは近い将来本当に起きそうで、なんとも心配でつらい話だ。
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シーズン2に引き続き、真田さんも見せ場しっかりで出演しており、サムライワールドとは別の世界でメイヴ役のタンディ・ニュートンとも絡みがあり結構面白いシーズン3。「ブレイキング・バッド」のジェシー・ピンクマンを演じて一躍スターになったアーロン・ポール、そして映画スターのヴァンサン・カッセルも本シーズンでそれぞれ重要な役どころを演じるメインキャラとして登場。特にアーロン、こういう役、とても良く似合うな…。これも「ブレイキング・バッド」効果かと思ってしまうくらいに。そしてアンソニー・ホプキンスが不在だったシーズン2には無かった緊張感をヴァンサンがいい意味で威圧感たっぷりに引き継いでくれている。どんな結果になろうとも、自分の信念で突き進むドロレスが最後に取った選択は…。こういう時、人はまんまと「ハッ」とさせられるんだと思う。
3.キング・オブ・メディア シーズン2
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英語の原題は「Succession」。DVDでは「メディア王~華麗なる一族」なんてタイトルもついているが、これが皮肉なもので。もう実にゲスい人たちばっかりが出てきて大変。正直な所感、シーズン1途中まででもうやめようかなと思っていたのだが、「あれ、何か面白くなってきた?」と続きを見ていくうちに、月並みな言葉だが、「ハマってしまった」という感じ。シーズン2は全話要所要所で色々盛り上がる。シーズン最終話に向けて、どんどん色んな対立が繰り広げられていく。基本的にはお父さんが一代で築き上げてきた帝国を、セレブ気取ったバカな子どもたちがどうやって継ぐんだい?という話なのだが、間違ってもこんな一族には生まれたくない、と思う半面、親の七光りを存分に堪能している子どもらを羨ましく思えるシチュエーションがあったり、こんな家族を取り巻く会社の主要人物たちの野心や自己防衛本能など、金持ちな経営者セレブたちといっても、ただの滑稽でガメついゲス野郎じゃないか、と暴くかのような描き方が、面白くもあり悲しくもあり…。と、結局それぞれのキャラクターに興味が行ってしまう作品だ。
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一家の大黒柱でメディア王のローガン・ロイを演じるのはブライアン・コックス。ブライアンはさすがの風格で、もうメディア王にしか見えないし(笑)、ジェレミー・ストロング演じる次男・ケンダルや、サラ・スヌーク演じる長女のシヴ、そしてキーラン・カルキンが演じる三男のローマンと、みんなそれぞれ癖が強い傲慢チルドレンっぷりを見事に発揮している。いつのまにか気付くと「みんな、本当にゲス野郎役が上手いね~!」と心から拍手を送ってしまうほどだ。見た人はわかると思うが、シーズン1で、「これコメディだよね?」と気付く。(※日本での放送は2019年11月後半からでしたが、本当に面白かったので2020年のドラマの中に入れておきます)
次回へ続く