永久保存版!『ゲーム・オブ・スローンズ』デヴィッド・ベニオフとD.B.ワイス来日インタビュー

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世界中で爆発的な人気を集めた大河ファンタジー『ゲーム・オブ・スローンズ』がついに最終章を迎えた。先ごろ発表されたプライムタイム・エミー賞ではドラマ部門の作品賞を筆頭に12部門の最多受賞に輝き、見事有終の美を飾った。まさにアメリカドラマ史に残る傑作となった本作を生み出したクリエイターのデヴィッド・ベニオフとD.B.ワイスが来日。番組終了後、初めて公の場でその思いを語ってくれた。

――ついにシリーズが完結しましたが、この結末は最初から思い描いていたものだったんですか?
ワイス:だいぶ昔の話だからちょっと記憶が混濁している部分もあるけど、最終的にはこういうストーリーラインにしていきたいというアウトラインが決まったのは第二章の頃だったかな。それをベースに話が進んでいくに連れて詳細に描き込んでいったわけだけど、実際に脚本を書き始めない事にはどのシーンがどうなるかまでは分からないから。そこは書きながら進めていったという感じだよ。でも四章、五章、六章なんかもある程度結末はこうなるというのを見据えてストーリーを作ってたんだ。

――シリーズを通して若いキャストが成長していきましたが、俳優の成長に合わせてストーリーを変えた事もあったんでしょうか。
ワイス:当たり前な事だけど、彼らもいつまでも子供ではいられないからね。ソフィー(・ターナー)もメイジー(・ウィリアムズ)も、アイザック(・ヘンプステッド=ライト)も最初は小さな可愛い子供たちだったのに、この間なんてソフィーの結婚式に行ってきたんだから。身長も僕とほとんど変わらないくらいになってるし、みんな成長したし変わっていったよね。特にアイザックはすごく背も伸びちゃって。幸い劇中ではずっと車椅子だったから、どれだけ背が高くなっているかあまり分からないようになっていたけど。そういう意味では幸運と言えば幸運だったね。ただ役者の成長に合わせてストーリーラインを変えていったかというと、この作品においては特にしなかった。子役の成長がストーリーラインを追い越してしまうというのはTVではありがちだけど、そのための調整というのはあえてしようとは思わなかったんだ。アリアは最初は11歳の可愛い女の子だったのが、今では立派な一人前の女性になったわけだけど、大人になったからと言ってもドラマの中ではみんな初めて会った時と同じように接してる。だからこれはもう視聴者の方に受け入れてもらうしかないよね。

 

――このドラマでは多くのキャラクターが死んでいきましたが、もし可能なら生かしたかったキャラクターはいましたか?
ベニオフ:シリーズ全体を通して、どのキャラクターも死ぬべきタイミングで死んでいったとは思ってるけど、確かにそういうキャラクターは何人かいるね。でも役というより、演じた俳優と会えなくなってしまう事を寂しく感じてしまうんだ。例えばドロゴ役のジェイソン・モモアとは私生活でもとても親しくなったので、一緒に過ごすのがとても楽しかった。なんといってもジェイソンは世界に2人といない存在だからね(笑) でもドラマとしてはドロゴの物語はやっぱりあそこで終わるべきだったし、仕方がない。彼は第二章にも夢のシーンで再登場したけど、実はその理由は主に僕たちがまた彼に会いたかったからなんだよ(笑) このシリーズで、死んでいくキャラクターを演じた役者さんに会えなくなって寂しいという思いは何度も経験したけど、それはつまりそれだけ素晴らしいキャストに恵まれたという事。僕らの友人には同じようにTV業界でいろんな俳優たちと仕事をしている人も多いけど、結構怖い話も聞く。甘やかされてたり、気難しすぎたり。でも『ゲーム・オブ・スローンズ』に関しては、ごく僅かな例外を別にして素晴らしい人ばかりに恵まれて、だからこそキャラクターが死んでキャストに会えなくなるのが寂しかったんだ。それはジェイソンだけでなく、キャトリン役のミシェル・フェアリーやロブ役のリチャード・マッデンにも同じ気持ちだったよ。

――これだけ大勢の登場人物がいるにも関わらず、どのキャラクターも非常にしっかりとした肉付けがされていましたが、割とすんなり肉付けできた人物と、逆に難しかった人物は誰ですか?
ワイス:もちろん原作があるから、最初の数シーズンは原作に基づいているんだけど、本にストーリーもキャラクターもきっちりと描き込まれているわけだから、そういう意味では出だしは順調だった。でもキャスティングというプロセスを経て、やっぱりいろいろと思うところが生まれてくるものでね。ロバート・バラシオンを演じたマーク・アディなんかは、僕らが原作を読んで想像した通りの王だった。PCで見る小さなオーディション映像ですらルックス的にも声のトーン的にも完璧にハマっていて、こんな風にキャスティングできたら楽だよねって思ってたんだけど、残念ながらそんなに甘くはなかったね。彼と同じくらいイメージ通りだったのは、ティリオン役のピーター・ディンクレイジとネッド・スターク役のショーン・ビーンくらいで、あとは僕らが想像していた役柄にはなかなかハマらなかったよ。むしろ役者の演技の幅が広すぎてハマらない人もいて、レナ・ヘディなんかはその代表格だと言えるね。普段の彼女は役者としてはもちろん、人としても原作とは全然違う人物で、ものすごく人を笑わせてくれるユーモアあふれる人だし、座り方だってもっとラフだったりする。でもそんな彼女だからこそ、原作よりもかなり肉付けができたと思ってるんだ。彼女自身の役柄に対する解釈もすごく良くて、サーセイという人物により人間的な解釈を加えているし、そこにはいい揺らぎがあって、いいユーモア感覚がある。そういうものが自然と盛り込まれていったんだ。あとはリトルフィンガー役のエイダン・ギレンもそうだね。彼が演じるリトルフィンガーは、原作に描かれているよりもはるかにミステリアスで、何を考えているのか分からないようないい意味での読み取れなさがあった。しかも彼がセリフを言うに連れて、キャラクター像がどんどん膨らんでいくんだ。それで、わざわざ彼を原作通りのイメージに押し込める必要はないと思ったんだ。

――最初に原作者のジョージ・R・R・マーティンに映像化の話を持ち掛けた時に、彼からジョン・スノウの本当の母親は誰かと聞かれて、正しく答えたから映像化のOKが出たというのは本当なんですか?
ベニオフ:本当だよ(笑) もともと僕らはこの原作を読んだ時にすごく興奮していて、今まであったどの企画よりもワクワクしていたんだけど、それだけに映像化に対してはすごくナーバスになっていたんだ。そもそも原作者の彼が映像化を許してくれなければ、実現できないわけだからね。それで緊張しながらロサンゼルスのTHE PARMというステーキハウスで彼と初めてのランチ・ミーティングをしたんだけど、実際にはそのミーティングは4時間にも及んだんだ。終わった頃にはウェイターと僕らしか残ってなかったよ。その時の事は今でも強烈に覚えているけど、ジョージの大きなヒゲにバターがちょっとついててね(笑) それで(彼のモノマネをしながら)「ジョンの本当の母親は誰だと思う?」ってクイズを出されたんだ(笑) もちろん当時はまだ原作でもその事は明かされていなかったんだけど、たまたま僕らは前日に2人でこの話をしていて、いいセオリーを思いついていてね。そしてラッキーな事にそれが正解だったわけだ。でもこの事も映像化を許してくれた理由の一部ではあるとは思っているけど、単純にクイズに正解したからというわけではなくて、いかに僕らがこの作品に対して執拗に思い入れているのか、その情熱的な想いを感じてもらえたからだと思うんだ。同じ頃彼にはハリウッドから映画化オファーがたくさん来ていたそうなんだけど、映画の2時間程度にこの作品をまとめたら、物語の95%はカットしなくてはならないわけで、僕らはそんな事はしたくなかった。ただ僕らに足りなかったのは経験で、彼自身もその事はよく分かっていてきっと不安もあったと思う。それでも僕たちの情熱を信じてくれて、クイズにも正解した事からこの作品についてまるっきり分かってないという事はないだろうと考えて、僕らに賭けてくれたんじゃないかって思ってるんだ。

――ドラマの撮影中、楽しかった思い出はどんな事ですか?
ワイス:10年もあると、思い出は数えきれないよ。あまりに長すぎて、もう覚えていない事も多いし。なにより重労働だったしね。でも初めてクロアチアに行った時の事は印象深いよ。キングズ・ランディングは第一章ではマルタで撮影してたんだ。あそこでロケに使える部分は全て使ったよ。その後、より作品に合うロケーションを探してクロアチアに行き着いた。別に楽しかったとか、大騒ぎしたとか、そういう思い出じゃない。ただ、ドブロヴニクという古い町で第二章を撮って、そこはまさしくキングズ・ランディングで、現地にある場所をそのまま使ったシーンも多い。町を歩いていると、長年夢見た世界の中にいる気分になったよ。ドブロヴニクにある庭園は撮影で多用した。『サウスパーク』でネタにされるほどね。あの庭園でよく撮影した理由は、本当に美しい場所だったから。アドレア海を臨むよく手入れされた屋敷があって、もう仕事という感覚ではなかったよ。誰もが休暇を過ごしたくなるような場所なんだ。あまりに美しくて物語の世界にいるようだった。そこでイスに座って穏やかな気分でただセットを眺めてた。背景にはアドレア海。衣装を着た役者たちは仕事だという事を忘れそうで、互いに今は仕事中だと言い聞かせ合ってたよ。それくらい素晴らしい場所だったんだ。

ベニオフ:僕にとって一番の思い出は、アイスランドの氷河の上で、撮影後にスタッフやキャストのみんなで雪合戦をした事かな。冬のアイスランドの撮影が良かった点は、昼が短くて5時間くらいしか撮影できなかった事だね。スタッフは暗い中で後片付けや明日の準備があったけど、それでも作業時間は短かった。雪合戦の後はみんなで小さなモーテルに戻って酒を飲んでた。これがアイスランドの過ごし方だよ。撮影は少人数だったけど、本当に楽しかった。とても美しい国で素晴らしい時間を過ごせたよ。

(インタビュー/文:幕田千宏)

 

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