放送作家、脚本家としてテレビを知り尽くした君塚良一監督が、朝の情報番組であるワイドショーをテーマに描いた中井貴一主演の話題作『グッドモーニングショー』。本作のブルーレイ&DVD発売を記念して、君塚監督よりインタビュー・コメントが到着した。さっそくご覧頂こう。
――「映画」で「テレビのワイドショー」のことをやるというのが、とても面白いなと感じたのですが、映画の中でテレビのこと描こうと思ったのはなぜですか?
僕はもともと欽ちゃん(萩本欽一さん)のところでコントを書いて、放送作家としてバラエティをやったり、テレビドラマも書いてきました。そして映画も撮るようになって最近少しテレビから離れてみて思ったのが…、テレビというメディアは不思議なところがあるんですよね。なんで視聴者のために視聴率ばかり気にしたり、物事をまげて伝えたりするのかという疑問が、何十年もテレビの仕事に携わっているけれども、ずっと前からあったんです。ここで一度、「テレビメディアとはなんぞや」っていうことを総括してみたいと思ったんです。
テレビのことを冷静に見て、描こうと思った時に、それをテレビでやっちゃうと、埋もれてしまうと思ったんですよ。テレビって何でもありなところがあるから、その中で、テレビメディアについて考える、あるいはテレビを舞台にしたことをやっても、「それもテレビでしょ?」ってなっちゃうと思ったんです。
だから、あえて、劇場の暗い空間で、一度座って頂いて、シネスコの画面の中で、画面を切り替えつつ、ここでテレビを見ているようにしつつ、その裏側も見せますよ、というふうにしたかったんです。みんな、なんだかんだと文句をいいながらも、テレビを見ている日常があるよね、ということに気付きますからね。
――とてもスピーディーな展開の作品ですが、海外の作品など何か参考にされた作品はあったのでしょうか?
はい。最初にプロデューサーから言われたのは、「ディナーラッシュ」。イタリア料理店の厨房側とお客様のフロアとの話。はじめに、この話があって、僕もこの作品は知っていたのでピンときました。料理を作る側と、それを味わう側。テレビのワイドショーも、番組を作る側と、それを見る側ですよね。
――この作品、コメディだと、そう思って観ていたら最終的には笑えない?という結末が待っていますよね。
まさに映画だからそういうふうに感じてもらえたんだと思います。これがもしテレビでやっていたら、「おもしろそうでしょ、楽しそうでしょ」っていうので終わってしまう。
いろいろな捉え方があって、海外では、かなり強烈なブラックコメディと捉えられたりもするし、一方違う映画祭だと、大爆笑のまま終わることもあるし。テレビ、マスコミ関係者の方たちは「これは僕たちへのエールですね!」と捉えてくれたりもします。
いろんなふうに賛否両論で捉えてもらっているということは、映画として上手くいった作品だと思います。まずは楽しんでもらうことが一番だから、それを目指しました。
――俳優さんたちの演技がとても素晴らしいですね。特に見どころのシーンは?
中井さん(澄田キャスター役)と濱田君(立てこもり犯)のシーンはすごかったですね。あのシーンは、濱田君には、「何か言われてカチンときたら反応してくれ」とだけ伝えていたんですが、彼は中井さんからの台詞に、いちいちカチンとしたらしいんですね。中井さんには、お父さんが息子に話をするような感じというイメージを伝えてありました。
あのシーンは、一気に撮っています。彼らもやりながら変化していくんです。ほぼ台本は無いのに、お互いが怒鳴り返していくようになったんです。もうただの本当のケンカになっているわけ。
ああいったシーンでは、優れた俳優さんに少しのヒントを監督として渡せば、それが100倍になって返ってくるというような…、これが映画の総合芸術の面白さであり、そういう時は幸せだなと思いますね。
ハラハラドキドキのあっという間に終わるノンストップン作品なので、まずはとにかく楽しんでほしいです。そして、「普段すごく近くにある存在のテレビメディアって、何なんだろう。視聴者の希望に応えようとして、なんだかおかしなことになっちゃっているテレビメディアって一体何なのだろう」っていうことを少し考えてもらえたらと思います。
とにかく、楽しんでほしいですね!
――君塚監督、どうもありがとうございました!
『グッドモーニングショー』4月26日(水) Blu-ray&DVD発売
Blu-ray 豪華版 ¥5,500+税
DVD 通常版 ¥3,800 +税
発売元:フジテレビジョン 販売元:東宝
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