YouTubeの登録者数を45万人持つ、台湾で絶大な人気を誇る三原慧悟さんの、初の商業映画監督作『台湾より愛をこめて』。台湾への愛がたくさん詰まった本作で主演を務めるのは、朝ドラ「わろてんか」でおなじみの大野拓朗さん。三原監督、大野さん、共演の落合モトキさん、岡本夏美さんの4人にインタビューし、映画の裏話や台湾ロケについてたっぷり語っていただきました。
――三原監督、この映画が製作されることになった経緯を教えてください。
三原:僕が台湾で活動を始めて、少しずつ僕のことを知っていただけるようになった頃、プロデューサーの方に声をかけていただいて、旅の映画を一緒に撮りたいというお話になりました。僕自身、普段は台湾の方に向けて活動していますが、日本の方にもっと台湾を知っていただきたいという気持ちがあったので、ぜひ作りたいと思い、製作に至りました。
――大野さん、落合さん、岡本さんは出演が決まって、台湾で撮影すると知った時、どのようなお気持ちでしたか?
大野:僕は「わろてんか」で芸人さんの役をやらせていただいていたので、この映画の役を知って、「芸人さんづいてるなぁ、縁を感じるな」と思いました。台湾にはとても憧れていて、旅行した友達からも良い評判ばかり聞いていたし、ボイストレーニングでお世話になっている先生も台湾の方で、何かと台湾づいている人生だったので、いつか行きたいと思っている中、仕事で行けるなんて「なんてハッピーなんだ!」と思いましたね。
落合:僕も「台湾に行けるんだ!」と、まず思いました。どの現場でもそうですが、拓ちゃんとは初めてのお仕事だったので、共演するのは緊張もありましたが、楽しみでもありました。とてもいいコンビネーションで楽しかったです。
大野:やっと拓ちゃんって呼んでくれた。僕はオッチーって呼んでたのに、ここまで長かった!(笑) オッチーとの共演、もうすっごく楽しかったですよ。ちょいちょい小ボケ入れても絶対に突っ込んでくれるから気持ち良かった!
落合:良かった(笑)。
岡本:本当にいいコンビですよね(笑)。私は出演が決まった時、海外で映像作品を撮ったことがなかったので、どうなるんだろうという気持ちと、大野さんと落合さんとの共演にワクワクする期待感もありました。緊張もしましたが、スタッフ・キャストでのお食事会でいろいろお話しできたことでだいぶ打ち解けて、楽しい気持ちのまま台湾で撮影できて良かったです。
――撮影中のとっておきのエピソードを教えてください。
大野:そういえば、居酒屋のシーンで僕が感動している時に、後ろで店員さんがビールをこぼしていましたね。
岡本:台湾の街の自然な状態を撮っているからですね。
三原:ハンディカムで撮ったりもしていたから、予期せぬことが起きるんです。
岡本:土砂降りになったこともありましたよね。私は撮影がなかったのでパフェを食べに行ってたんですけど(笑)。
大野:パフェ!?
落合:今、どこに行ってたか知ったよ!
大野:僕らが機転を利かせて、流れで雨のシーンとして演じていた時に~! そういえば、撮影中お金を渡されていなかったんですが、雄介と光一が観光しているところを撮っていて、買い物するのにお金がなくてどうしようってアタフタしているところも映画に入ってます(笑)。
――アドリブが多かったのですか?
落合:そうですね。「よーい、ハイ」で撮るよりも、カメラを回し続けて、それを編集してもらいました。
――ドキュメンタリー風になっていますが、こういった作品は台湾では人気なのですか? それとも新鮮に映るものなのでしょうか?
三原:ドキュメンタリー風の作品は、台湾ではあまりポピュラーではないかもしれないですね。分かりやすい、しっかりと作り込んだドラマが人気なので。僕は普段YouTubeで台湾の方と交流しているんですが、日本人目線というか、観光客目線で台湾を見ることで好評を得ているので、ドキュメンタリー風の作品が新鮮なのではないでしょうか。
岡本:監督のインスタグラムを見ても、書かれていることもコメント欄も中国語なので分からなくて、この映画に関するリアクションがどんなものなのか気になっていました。
三原:みなさん、楽しみにしているようですよ。台湾では映画が娯楽として物凄く強いんです。料金も800円くらいと、日本よりも安いし。本作は日本のチームが台湾で撮った映画ですし、台湾の方には日本人が好きな人が多いし、期待されているのをヒシヒシと感じています。
――大野さんは芸人さんの役が続いていますが、今回、雄介を演じるにあたって役作りで意識したことはありますか?
大野:リハーサルで監督から「こいつはとにかくウジウジしているんだ」と言われたんです。落ち込む時はドーンと落ち込むけど、明るく人を引っ張っていく時もあるから、大型犬のイメージで演じました。
岡本:大型犬! 分かりやすいですね。
大野:大型犬ってシュンとしたかと思えば、「行こうぜ、行こうぜ」って散歩に行きたがったりしますよね。僕、「行こうぜ」の方は得意なんですけど、あんまり落ち込むことがないので、ウジウジするってどんな感じなんだろうと考えながら作っていきました。
――落合さんは長く俳優業を続けていらっしゃって、いろいろな役を演じてこられたと思いますが、今回演じた光一は芸人をやめて会社員になったという、少し複雑な経歴の持ち主ですよね。どのように役作りされましたか?
落合:漫才をしていないところは、僕の素の部分が結構出ているかもしれないです。お笑いのところは、これまで漫才をする役はなかったので、YouTubeで漫才をたくさん見ました。光一は突っ込みですが、プロの突っ込みの方は無意識にできるんだと見ていて思いまして、無意識に突っ込んで見えるように、そこは意識して演じました。
――岡本さんは台湾にいる女の子メイをとても自然に演じていて、中国語も上手でしたよね。
岡本:(照れて)いやいや、とんでもないです。
――中国語は監督から習ったのですか?
岡本:全然教えてくれなかったですよね~(笑)。
三原:教えられるほどじゃなくて…本当に申し訳ない。
岡本:事前に音と文をいただいて、耳で聴いて覚えるしかない中で、台湾に行って撮影しました。マイちゃんという妹役の方が中国語ができたので、彼女に教えてもらいました。難しかったですが、間違えてもいいから勢いで話そうと頑張りました!
――大野さんと落合さんは、どのように練習したのですか?
大野:もうバッタバタの状態で寝ずに覚えたので、漫才のネタ合わせをするどころじゃなかったよね。
落合:そうだね。もらった音源を耳で聞いても速いし、発音も難しいしね。ニュアンスが違うだけで、意味が変わってきちゃうから大変でした。
――大野さんは「わろてんか」の撮影と重なって大変でしたよね。体力には自信がある方ですか?
大野:はい、あります!
岡本:主演の大野さんがずっと元気でいてくれたので、現場がすごく明るくて、楽しく撮影できました。
大野:楽しかったもん。ご飯は美味しいし。最高の仕事でしたよ。
――監督、大野さん、落合さんは同世代ですよね。岡本さんはみなさんより10歳ほど若いですが、今回お三方とご一緒していかがでしたか? みなさん、親切でしたか?
大野:(ジーッと岡本さんをにらむ)ちゃんと答えなさい!
岡本:えーと…、みんなすごく優しくて、すごくカッコ良くて、こんな素敵なお兄さんたちがいるんだなと。
大野:(満足顔で)はい、オッケーで~す。
三原・落合:(爆笑)
岡本:いや、もう本当にこのままでした(笑)。悪い気の使い方をすることもなく、素敵な現場だったなと思います。
落合:彼女、しっかりしてるんですよ。メイはちょっと年上をバカにするキャラクターなんですけど、そこをしっかりと演じていました。
岡本:それ、褒めてるんですかね!?
――(爆笑)本当に良いチームワークですね。
岡本:撮影中に落合さんがお誕生日を迎えられたんですが、みんなでお祝いして、より仲良くなりました。現地にいろいろなヘンなマスクが売っていたので、私はマスクをプレゼントしました。大野さんは何かすごいものをあげてましたよね?
大野:パンツね。
落合:そうね、パンツいただきましたね。
大野:履いてる?
落合:鑑賞用にしてる。トラが吠えてる柄のパンツだから(笑)。
大野:縁起がいいから勝負パンツにしてね(笑)。
岡本:初日舞台挨拶の時にぜひ(笑)。
――監督はなぜ活動の拠点に台湾を選んだのでしょうか?
三原:僕が初めて友達になった外国人が台湾人だったんです。その子がすごく優しくて、こんな優しい人のいる台湾で何かしたいと思ったことがきっかけです。僕は学生の時に映画を撮っていて、1回1人で台湾に行って、現地の人に声をかけてドキュメンタリーを作ったことがあって。その後、YouTuberを始めました。
岡本:人気YouTuberですよね。
大野:台湾で10人に1人が監督を知っているんですよね。今回の撮影でも、空港に着いた途端に空港スタッフに囲まれちゃって!
落合:ビックリしましたよ! 監督、何かヤバいものでも持ち込んだのかと思っちゃいました(笑)。
――素敵なお話をたくさん聞かせていただき、ありがとうございました。では最後に、みなさんがこの映画に込めたメッセージを教えてください。
落合:監督がお話していたように、もっと日本と台湾が近づけるような作品になったらいいなと思いますし、日本も台湾も地震の被害によって大変な状況の方々がいらっしゃいますので、いろいろなところで助け合うことができて、娯楽として映画でも協力できたらと思っています。
大野:夢に向かって突っ走っている人も、悩んでいる人も、立ち止まってしまっている人も、これから進む人も、いろいろな人が共感できたり、別の向き合い方もできたりする映画なので、今一度「ああ、こんな夢があったな」と懐かしんだり、自分が持っている夢を実現するために「もう少し頑張ってみよう」と思ったりしてもらえたら嬉しいです。夢を持つことは希望を持つことで、すごく前向きでいいことだと思うので、それを改めて感じてもらえるように精一杯もがいて作りました。
岡本:私が演じたメイのセリフで「私、自分のことあんまり好きじゃないから」といったセリフがあるんですが、そのシーンが個人的にすごく好きなんです。大きい夢があるのに、どこか自分に自信が持てなくて一歩踏み出せないことって、誰しも共感できると思うんですね。撮影時、私も似たようなことを思っていた時期だったので、そのシーンにリンクして泣きそうになったりしたんですが、演じたことで心がスッと軽くなったんです。誰かが優しく背中をポンと押してくれるような映画だと思うので、私のようにみなさんにも体感していただけたらなと思います。
三原:この映画の脚本は別の方なんですが、原案は僕が担当していて、自分の実体験に基づいているんです。僕は大学のサークルで漫才をやっていたんですが、相方と離ればなれになってしまった経験がありまして。この映画に出てくる二人って、決してカッコ良くはないんですよね。ケンカのシーンも物凄くダサくて、はたから見たらちょっとイライラするような二人ですが、「しっかりしなきゃいけない」とか「男らしくしなきゃ」とか「友情とはこういうものだ」といったステレオタイプなことを言いたいわけじゃなく、ダサいけど可愛らしい二人がイチャイチャする様子を撮りたいと思い、ポジティブな気持ちで映画を作りました。ぜひ多くの方に見ていただけたら嬉しいです。
三原監督が台湾でモテモテだと大野さんがからかって監督が照れたり、岡本さんが突っ込みを入れたり、落合さんが穏やかに相槌を打ったりと、すごく良い雰囲気の4人で、とても楽しいインタビューでした。お話を聞くうちに、台湾に行きたい!という思いが強くなりました。
(取材・文 清水久美子)
★『台湾より愛をこめて』★
3月24日(土)新宿シネマカリテより公開
配給:ユナイテッド エンタテインメント
公式サイト:http://www.taiwan-movie.com/
©「台湾より愛をこめて」製作委員会
【ストーリー】
漫才師として成功することを夢見ていた雄介(大野拓朗)と光一(落合モトキ)は、台湾の基隆(ジーロン)の海辺で歌手を夢見る少女リンと出会い、5年後に同じ場所での再会を約束。だが雄介と光一はコンビを解散し、光一はお笑いの道を諦め会社員に、雄介はピン芸人を続けるも売れない日々に悩んでいた。そんな雄介の心情を知り、台湾旅行へと誘う光一。旅の途中、二人は夢を追う少女メイ(岡本夏美)や、人気アイドル三原(三原慧悟)と知り合い、人生を見つめ直すことに…。