全世界で一大ブームとなった大河ファンタジー・ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』で3大善人キャラクターの吹き替えを担当した、ブライエニー役斉藤貴美子さん、サム役の最上嗣生さん、ポドリック役の白川周作さんによる座談会【後編】。
――共感ポイントが本当に多いドラマですけど、みなさんが共感を覚えたキャラクターは誰だったんでしょう?
斉藤:演じている時はもう自分はブライエニーだと思い込んで、その視点でしか見られなくなってるから……。ただ、これだけキャストが出てくると、みんなひとつの役だけじゃなく何人かの声を担当してるんですよ。私の場合は、ブライニーからしてみれば、主君を殺した憎き相手であるスタニスの奥さんセリースの声もやってたからもう複雑で(苦笑) 私は声が特徴的すぎるし、目立ってしまうので、ひとつの作品でいくつも声をあてる機会はなかなかないのに、その数少ない機会がまさかの立ち位置!(笑) しかも片方は屈強で片方は病弱って正反対だし。本当に複雑な気持ちですよ。
ただすごく面白いなと思ったのは、ブライエニーの時はすごく憎んでいたスタニスだけど、奥さんの視点で見た時に、そんな憎い相手にもこうして家族がいて、愛があって、生活があるんだってリアルに迫ってきたんですよ。だから共感という点では、視点の持っていき方次第で全員のキャラクターに共感できるんじゃないかって。でもアリアとか好きですけどね(笑)
白川:僕、実は一番最初にこの現場で頂いた役は、ポッドでもエッドでもなく、マットスっていうダヴォスの息子の役だったんですよ。普段の声としても一番マットスが近いし、僕は彼の役が本役だと思ってて、きっと父親のダヴォスと一緒にいろいろと成長していくんだろうなって思ってたんです。そうしたらワイルド・ファイアで爆死ですよ。
斉藤・最上:爆笑
白川:本当にええ~っって思って。この僕の気持ちはもうダヴォスに委ねるしかないから、そういう意味では共感とは違うけど、思い入れみたいなものは自分の役以外ではダヴォスに向いているし、彼にはドロップアウトする事なく、勝ち残って行って欲しいって思ってますね。今のところこの流れ的にはちゃんと戦ってくれているし。
最上:僕もね、結構いろんな役をやらせて頂くんですよね。
白川:最上さんはどこにでもいますよね。どの勢力にも最上さんがいる(笑)
最上:それで自分がやってた役で恐縮なんですけど、僕は第一章に出てたシリオ・フォレルが好きで。この間もアリア役の合田さんとサンサ役の津田さんと話していて、アリアの師匠はシリオで、サンサの師匠はある意味でリトルフィンガーなんだけど、二人の立ち方が各々の師匠の立ち方っぽいって言われて。なんかそれを言われた時にぐっときましたねぇ。
今日の収録でもアリアがメリサンドルに、師匠と同じ言葉を言うんですよ。彼の存在がアリアの中にしっかりと根付いているのが伝わって、何とも胸が熱くなります。あと思い出としては、いろいろ役を兼ねすぎて、自分で自分と会話していたな、っていう(笑)
白川:しゃべらないように別の勢力にしているはずなのに、会っちゃったっていう(笑)
最上:僕はもともと一番最初に演じたのはメイスター・エイモンで、その後がサムだったんですよ。そしたら演出の依田さんから、「これってさ、原作だと二人で旅に出ちゃうんだよね」って言われて衝撃を受けました(笑) ドラマでは旅には出なかったものの、結局お付きにはなってしまったという。
白川:あるあるですよね~(笑)
最上:あとは王都にいたジャノス・スリントが左遷で<壁>に飛ばされて来たり。もう何で<壁>に行くんだよ、そこにはサムとエイモンがいるんだよ! わざわざ<壁>に飛ばす事ねぇだろ!って(笑)
白川:もっと違うところに行ってくれれば良かったのに(笑)
最上:で、ナイツ・ウォッチの新しい総帥を決める会議の時に、ジャノスの意見にサムが反対して、そこにエイモンがでてきて案の定、三つ巴ですよ(笑) もう、<壁>は鬼門ですよ?(苦笑)
斉藤:大活躍だね(笑) でもこれは吹き替えならではの面白さだよね。どうしても一人一役だとキャラクターが多すぎてスタジオに入りきれない(笑)
――エッドなんて、最初は割と影が薄かったのに、いつの間にかしれっと存在感が出てきましたよね。
白川:最初はピップやグレンの方がジョンと仲良かったんですけどね。でもあれはやっぱり生き残った者の結束というのもあるんでしょうね。寄り添って結束していくしかないだろうし。でもそれにしても仲良くなりましたよね。
最上:まぁ、ジョン、サム、エッドと生き残った3人の中では、エッドさんだけは男女の親密さっていうのは分かってなかったかもしれないですけど(笑)
白川:くそ~、上から来た~(笑) まぁ陰気なエッドですからね。でも3人組にした時に、エッドが陰気だったからバランスが良かったのかもしれないですね。サムはどこか楽観的な明るさがあるし。日常でもバランスが良いと仲良くなるし、3人組だと描きやすいという邪な理由じゃなく、リアルにこういう3人って仲良くなるよねっていう過程が演じてて見えていたので、都合で書いてるんじゃなくて、本当にちゃんと人間を描いた結果の物語なんですよね。
最上:陰気なエッド、陽気なサム、何も知らないジョン・スノウ。
斉藤:上手いな!(笑) でも本当に面白いよね。生きてる人、死んでいった人、いろいろいるけど完璧な人は一人もいない。普通はファンタジーって万能なヒーロー的な人がいるけど、GOTだと主役が誰か言えないくらい、どのキャラクターも生々しくて不完全。ジョンやデナーリスが中心になっているのかもしれないけど、目線を変えればサーセイが中心になったりするわけで、一面的じゃないのが面白いんだよね。
(インタビュー/文:幕田千宏)
『ゲーム・オブ・スローンズ』日本語吹替版も、いよいよ最後の戦いが始まる――。『ゲーム・オブ・スローンズ 最終章』は、スターチャンネル【STAR3 二カ国語版】にて、6月28日(金)より放送スタート。(毎週金曜よる10:00~)
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